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三島工場で稼働中の水分散液、乾燥体、複合樹脂の3基のパイロットプラントを活用し、コスト競争力に優れる製造プロセス確立に向けた実証を進めるとともに、サンプル供給を通じて自動車部材、家電製品、建材、日用雑貨などの幅広い分野で引き合い件数を増やし、第5次中期事業計画期間での事業化を目指します。
CNFは、紙やパルプにはない特異的な性質を活かして、多種多様な用途への展開が期待されています。また、植物バイオマスから取り出した天然由来の繊維であり、低炭素社会の実現にも貢献できる素材です。
※ この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2015~2017年度助成事業の結果得られたものです。
当社のCNFは、水分散液だけでなく、乾燥体、成形体の形態や別の製法で高透明度化したCNFを提供しています。 また、複合樹脂についてはセルロース濃度を67%まで高めたCNF複合樹脂ペレットのサンプルも準備しています。用途、使用方法に応じて、サンプル形態を選択できます。
当社は、多様な原料を使い、パルプから製造する一貫生産型製紙工場である三島工場の強みを活かし、原料は化学パルプにとどまらず機械パルプや古紙パルプも選択可能です。
生産能力:年間約150トン(最大生産時)
A:広葉樹化学パルプ
B:針葉樹化学パルプ
C:機械パルプ
D:古紙パルプ
水分散液に対して、多くのユーザーからの「水を含むものは樹脂やゴムと複合化しにくい。水分を抑えたCNFが欲しい。」というニーズを踏まえて、CNF乾燥体製造のパイロットプラントを水分散液製造プラントに併設して、開発を進めています。
生産能力:年間約63トン(最大生産時)
CNFとパルプ繊維を複合化したCNF高配合の成形体は、軽量かつ高強度というCNFの特徴を活かした高性能材料であり、性能は汎用プラスチック材料を大きく上回る力学物性を示し、熱特性にも優れています。なお、シートタイプのCNFシート※(右下図)の開発を進めています。 ※愛媛大学・川之江造機㈱と共同開発
「亜リン酸エステル化法」でCNFを製造することにより、繊維幅を3~4ナノメートルまで微細化できます。従来よりも繊維幅が小さくなるため、高い透明性を有するCNFとなります。
最終製品の樹脂設計の自由度を高められるよう、セルロース濃度を67%まで高濃度化したCNF複合樹脂を用いることにより、性能に応じた濃度に希釈して使用できます。
生産能力:年間約100トン(最大生産時)
CNF水分散液の製造技術として、製造コストの低減を目的に、三島工場(愛媛県四国中央市)に設置したパイロットプラントで開発した省エネルギー型CNF製造プロセスを開発しました。さまざまな原料パルプからCNFを製造することができ、以下の4種類のサンプルを提供しています。
A:化学パルプ(広葉樹漂白品)
B:化学パルプ(針葉樹漂白品)
化学処理によって得られるパルプを原料とした最もオーソドックスなCNFです。疎水性のリグニン含有量が少ないため保水性が高く、親水性材料との相性が良いのが特徴です。
C:機械パルプ(漂白品)
物理的な力で木材を破砕したパルプを原料としたCNFです。リグニン含有量が多いため、脱水性に優れ加工効率が良いことや、疎水性材料との混合性の向上が期待できます。
D:古紙パルプ(雑誌古紙パルプ・漂白品)
雑誌古紙由来のCNF中に微細化された無機粒子を含むため、樹脂と複合した際には安価に補強効果が期待できます。
CNFの水分散液は、静値状態では高粘度を示しますが、せん断力を受け続けると粘度が次第に低下し液状になるチキソトロピー性を示します。
CNFは湿式で製造され、乾燥過程で凝集するため、樹脂と複合化するには様々な方法がありますが、凝集を抑制する処理を施した乾燥体とすることで、他の汎用フィラーと同様に樹脂へ複合化することができます。
※ CNF乾燥体の開発の一部は、平成27〜28年度の環境省の「セルロースナノファイバー 製品製造工程の低炭素化対策の立案事業委託業務」の成果によるものです。
CNFを樹脂へ10%複合化することで、樹脂の弾性率を1.3~1.4倍に向上し、強度も1.1倍~1.2倍向上できるため、樹脂部材をCNF複合樹脂と置き換えることで、構造材料部材の薄肉化が期待できます。現在、物性をさらに向上させる検討を行っています。
※上記のデータは測定値の1例であり、品質を保証するものではありません。
当社が開発を進めているCNFとパルプ繊維を複合化したCNF高配合の成形体は、汎用プラスチック材料と比較して高い力学物性を示し、熱特性にも優れる高性能材料です。
CNF成形体は、CNFの配合率を50~80%まで高めたもので、軽量かつ高強度というCNFの特徴を活かした高性能材料であり、性能は汎用プラスチック材料を大きく上回る力学物性を示し、熱特性にもすぐれています。 これまでプラスチック材料が利用できなかった高強度用途や耐熱性を必要とする用途など、今後、多岐にわたる用途展開が期待されます。
≪用途の可能性≫ 自動車部材、建材、家電筐体、電子基板、スポーツ・レジャー用品 等
汎用プラスチックとの物性比較(CNF配合率80%での例)
約5倍
(13~17GPa)
約20倍
(10~12GPa)
(100~150MPa)
約8倍
(55~70MPa)
注1 材料を引っ張った際の変形のしにくさ 注2 材料を引っ張った際に破壊するのに要する力 ※上記数値は測定値の1例であり、品質を保証するものではありません。
当社CNF水分散液ELLEX-Sは、繊維幅が数十ナノメートルですが、「亜リン酸エステル化法」で製造するELLEX-☆は、繊維幅を3〜4ナノメートルまで微細化でき、高い透明性を有するCNFです。
「亜リン酸エステル化法」は、繊維幅3~4ナノメートルまで容易に微細化でき、高い透明性を有するCNFを製造できる技術であることから、化粧品、塗料、インキ等の意匠性が要求される用途や光学系材料用途への展開が期待できます。
各水分散液から作製したフィルム
当社CNF複合樹脂ELLEX-R67は、樹脂成形加工を行うお客様のニーズに合わせて、性能に応じたセルロース濃度に希釈してご使用いただくことが可能です。CNF複合樹脂の一貫製造プロセスは、国立研究開発法人新エネルギー・産業 技術総合開発機構(NEDO)の2020~2022年度助成事業にて開発しています。
CNF複合樹脂「ELLEX-R67」をセルロース濃度10%、20%に希釈した場合、それぞれ1.7倍、2.1倍の弾性率を示し、下図のような減プラスチック効果が想定されます。環境省「プラスチック循環戦略」に掲げられている2030年ワンウェイプラスチック削減量の25%~38%までの減プラスチックも期待できます。
※1 トイレ用ペーパークリーナーにセルロースナノファイバーを配合する技術。Mintel社データベース内2017年5月大王製紙調べ。 ※2 当社調べ、「キレキラ!トイレクリーナー 1枚で徹底おそうじシート」従来品との比較。 ※3 ウエットワイパー類の除菌性能試験方法に準ずる試験による。すべての菌を除去できるわけではありません。 ※4 大王製紙調べ、検知管法。 ※5 JIS Z 2801に準じて行われた試験の結果に基づく拭き取り後の評価。
2018年よりELLEX-Mを加工し、車両部品への実用展開の可能性を探ってきました。2022年はルーフパネル、ドア全てにELLEX-M、ドアミラーにCNF複合樹脂を活用し、加えて、フロントボディカウル、リアボディカウルにCNFシートを初採用することでCNFの使用範囲を拡大しました。
CNFを用いてヤマセイ株式会社と共同でバス用フロントバンパーを製作し、道後プリンスホテル株式会社グループのお客様を乗せて公道を走行する観光ツアーバス「プレミアムバス」に実装しました。
CNF部材実装の効果
実装したCNF部材は、CNF成形体「ELLEX-M」を積層して製作しました。今回はバスのバンパーの製法である「ハンドレイアップ成形」を用い公道を走行するバスに実装できる品質でフロントバンパーを製作しました。
㈱タマス※とCNF成形体ELLEX-Mを搭載した高性能卓球ラケットの共同開発に成功し、㈱タマスより『レボルディア CNF』として2020年4月に販売が開始されました。さらに、2022年9月には同じく㈱タマスより『樊振東CNF』の販売が開始されました。※㈱タマスは、『バタフライ』商標で数多くの卓球用品を製造販売しており、選手用の高品質ラケットでは世界トップの実績(世界卓球2019全出場選手の56.6%が同社製ラケットを使用)を有し、国内トップ選手を多数契約選手に抱える国内卓球用品メーカーです。
ELLEX-Mによる効果
打球のスピードと回転数から計算される打球の威力を表すエネルギー効率(同じ素材重量当たり)を評価した結果、ELLEX-Mは、従来のラケット用高性能部材と比較して、打球の威力を高められる部材であることがわかりました。
卓球ラケット部材としての使用例
チームレスキュー合同会社(本社:兵庫県三木市、開発製造:長野県白馬村、以下「チームレスキュー」)が生産するスキー・スノーボード用ワックスの材料として、セルロースナノファイバー(以下「CNF」)乾燥体「ELLEX-P」の販売を開始しました。
採用の経緯
チームレスキューは、石油系パラフィン、フッ素不使用のスキー・スノーボード用ワックスを開発・生産するメーカーです。チームレスキューの製造技術にて、当社のCNF乾燥体「ELLEX-P」をワックスへ配合することにより、求められる環境性能やレスキューワックスの求める性能を持つことが評価されました。
採用された商品
スキー・スノーボード用ワックス『RESCUE ZERO ver1.3』2022年10月発売 人体環境に無害なRESCUE ZEROver1.3は世界で戦う競技者から上達を目指す一般の方まで、ハイレベルで簡単、そして人体や自然への影響を無くした自然を楽しむための最高峰のパウダー状ワックスです。version1.3では 総合製紙メーカーの大王製紙のC N F 乾燥体「ELLEX-P」を配合しました。
塗料へのCNF配合により顔料分散性やガラスへの密着性が良好となり立体感のある重ね描き、曲面への塗布等の塗料の高機能化が可能となります。 愛媛県と共同研究で開発を進めています。
CNF配合による効果
※本研究は、愛媛県と共同研究にて進めています。
CNFが有する特異的な粘度特性を利用することにより、液体の粘度コントロールが可能であり、高保湿性や低曳糸性も兼ね備えているため、化粧品添加剤用途への利用が期待できます。
チキソ性
CNFは、低せん断力下では高い粘性であるため、容器を傾けてもスプレーノズルから吸引することができ、高せん断力下では急激に粘度低下するため、スプレー噴霧するこができます。
分散安定性
CNFには水中で油や粒子を分散安定化する機能があり、食品や塗料等への展開が期待されます。
増粘効果
CNFの水分散液は、静置状態で高い粘度を示します。2%水分散液は、CMC4%水溶液と同等の粘度となり、CMCよりも少ない量で粘度を増加させることができます。
保湿性
※ここに記載されているチキソ性および増粘効果はELLEX-Sによる効果であり、ELLEX-☆の効果ではありません。
清水建設株式会社と共同で、当社グループのダイオーロジスティクス株式会社(以下DLC、住所:愛媛県四国中央市)の本社ビルにCNF配合コンクリートを活用しました。コンクリートにCNF水分散液(ELLEX-S)を配合することにより流動性が良くなることを確認し、DLC本社ビルの新築工事において、実際に門塀、土間、境界壁、機械基礎等に活用した結果、コンクリート打設時の施工性改善(打設時間を約3分の1短縮)が確認できました。また、第二弾として当社四国本社工場ビルの改修工事でもスロープにCNF配合コンクリートを採用しました。
コンクリートのひび割れ改善
三井住友建設株式会社と共同でCNFをコンクリートへ配合することにより、特定の条件においてひび割れ低減効果を確認しました。
セラミックとCNFを混合し、乾燥、成形、焼結することにより、セラミック材料を多孔質化することができます。
製法
物性
特徴
セラミック材料への機能性付与 軽量化、断熱、吸音、 吸着、ろ過分離 等
現在、食品等の包装には、ガスバリア性を持つ化石資源由来のフィルムが利用されていますが、CNFのガスバリア性を活かし、実用的にガスバリアシートを製造できれば、バイオマス由来のバリア包装資材への転換が可能となります。
フィルム基材(CNF/フィルムの積層タイプ)
フィルムにCNFをムラなく緻密に塗工することにより、CNF塗工フィルムは、高い酸素バリア性を示します。このCNF塗工フィルムの連続生産技術の開発に取組んでいます。
紙基材(紙/CNF/フィルムの積層タイプ)
フィルムにCNFを塗工した後、紙を貼り合せて加熱乾燥した積層シートは、非常に高い酸素バリア性を示します。また、無機層状化合物の添加により、酸素バリア性を損なうことなく、水蒸気バリア性が向上できます。