大王グループは、2021年5月27日に「大王グループ サステナビリティ・ビジョン」を策定し、合わせて気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言への賛同を表明いたしました。TCFD提言に沿った気候変動関連のリスク・機会評価を行い、経営戦略やリスク管理などに反映させ、財務上の影響等の情報開示の充実を進めています。

ガバナンス

大王グループでは、取締役会において2021年5月にサステナビリティ戦略である「大王グループ サステナビリティ・ビジョン」を策定しました。それに連動させる形で、気候変動のリスクと機会の評価、目標・方針設定・戦略策定、及び取り組み状況は、3か月に1回開催の「サステナビリティ委員会」で確認・審議しています。
「サステナビリティ委員会」は、代表取締役社長を委員長とし、取締役常務執行役員、オブザーバーとして監査役・社外取締役・社外監査役が出席しています。「サステナビリティ委員会」での決定事項は、四半期に1回、取締役会に報告し、取締役会全メンバーで気候変動に関する取り組みの実行・進捗を監督、重要事項は承認・決定しています。
「サステナビリティ委員会」の下部に「ESG小委員会」を設け、その小委員会の下部会として8つの部会があります。気候変動のリスクと機会に関わる具体的な取り組みは、「地球温暖化対策部会」「TCFD対応部会」「物流GHG削減部会」「森林・生物多様性対応部会」「価値共創部会」で検討・推進し、「ESG小委員会」でモニタリングしています。
当社グループは、「気候変動の対応」をマテリアリティのひとつに挙げ、なかでも「脱炭素」を重要視しています。特に石炭ゼロ化の推進は、生産部門担当の取締役常務執行役員を責任者として位置づけ、社内の取締役、執行役員の出席する「生産会議」や「中期事業計画検討会」でも、その取り組みを報告、モニタリングする体制としています。

戦  略

大王グループの国内紙・板紙部門とホーム&パーソナルケア(以下、H&PC)部門について、気候変動による事業への影響を1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つのシナリオを基に、中期(2030年)、長期(2050年)で分析しました。各シナリオの前提条件として、移行シナリオについては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書におけるシナリオ(SSP1-1.9、SSP5-8.5)やIEA(国際エネルギー機関)のWorld Energy Outlook 2022におけるシナリオ(NZE、STEPs)などを参照し設定しました。
物理的リスクについては、WRI(世界資源研究所)が公表するAqueduct、文部科学省 気象庁「日本の気候変動2020」、Four Twenty Seven、Encore、UNEP “Spreading like Wildfire: The Rising Threat of Extraordinary Landscape Fires”(2022)などのデータを基にリスク評価を行いました。
なお、右記のシナリオ分析におけるリスクと機会の財務インパクトは、
大:150億円以上、中:50億~150億円、小:50億円未満、 ー :分析中です。

【シナリオ分析】

移行リスク

移行リスクとしては、1.5℃シナリオでは、国内外の製造拠点によりカーボンプライシングの差はあるものの、炭素税などの法規制リスク、原材料価格の上昇リスク、商品のCFP情報に関する対応などが市場・評判リスクとして影響を受けることを認識しています。 エネルギー面では、紙・板紙事業のリスクが大半を占めると分析していますが、国内外のH&PC事業についても対応を進めていき、グループ全体として、2030年度へ向けた削減(2030年度の化石由来CO2排出量を2013年度対比で46%削減)、さらには、2050年度カーボンニュートラルに向けて取り組みを進めていきます。特に、国内については、三島工場を中心としたエネルギー対応のロードマップを見直しました。2023年3月に三島工場でこれまで外部へ販売していたFITバイオマスボイラーの電力を自家消費に切り替えるなど、今後も、燃料転換を含めた取り組みと省エネルギーの推進に積極的に取り組みます。 さらに今回、原材料のサプライチェーンを今後の市況変化による数量の増減も考慮して分析を行い、最大リスクを分析しました。物流活動を中心とした原材料のサプライチェーンの低炭素化についても取り組み、Scope3を含めたリスク低減を図ります。

1.5℃未満シナリオ

(※表は横にスクロールします。)

       
リスク項目事象の詳細2030年1.5℃2050年1.5℃戦略・対応策
政策・法規制CO2排出量削減の義務化
GHG排出量の規制強化
カーボンプライシングの上昇
・GHG排出規制とカーボンプライシングの導入
・エネルギー価格上昇による原価アップ
・FITバイオマスボイラー自社消費へ転換
・太陽光などの再生可能エネルギーの導入
・2030年度までにリサイクルボイラーを設置などにより、石炭ボイラー1缶以上停止による化石燃料から廃棄物燃料への転換
・省エネルギー技術導入、投資継続実施
・植林面積の拡大
・四国中央市カーボンニュートラル協議会等の取り組み推進
・リサイクルボイラー・石炭ボイラーでブラックペレット燃焼
・水素・アンモニア燃焼技術の導入
・CCUS(四国中央市カーボンニュートラル協議会などでの取り組み)
・炭素税導入により、各種資材価格が上昇・商品開発段階からGHG排出量がより少ない資材を選定しコスト上昇を抑制
・燃料転換
市場・評判環境対応商品へのシフト

・環境不対応商品の販売減
・CFP表示遅れによる販売減
・エシカル消費による需要減少

・環境対応への設計変更
・CFP表示などの推進、対応
・再生プラスチック化推進
技術商品物流を低炭素エネルギーへ転換・物流手段の低炭素化の取り組みとして新技術の導入等によるコスト増加・トラックから内航船・RORO船へのモーダルシフトと輸送距離の短縮の推進、ダブル連結などを推進
・今後の自動運転や水素・アンモニアトラック等の技術革新にあわせて導入を推進

物理的リスク

物理的リスクとしては、4℃シナリオでは、国内外グループ拠点において、渇水、高潮、高波は、立地条件を踏まえ、大きく影響がないと予想しています。一方、集中豪雨などにより、工場及び周辺にて50cm未満の浸水による短期間の物流の寸断リスクを認識しています。リスク低減のために、物流を含めたBCP、BCMの強化、また、継続的な節水技術の推進、水のリサイクル活用促進に取り組みます。さらに、2030年、2050年と進むにつれ、気候変動の影響により海外の一部では山火事などが増加することを認識しており、森林資源について、調達先の多角化、植林の推進による調達量の確保、地域・気候に適した樹種の選定・育種開発などを進めていきます。

4℃シナリオ

(※表は横にスクロールします。)

リスク項目事象の詳細2030年4℃2050年4℃戦略・対応策
急性的台風の多発、集中豪雨の多発・自然災害による生産活動への影響(洪水)
・道路・鉄道・港湾設備被害によるサプライチェーン寸断、商品や原材料輸送の停止
・BCP(事業継続計画)・BCM(事業継続マネジメント)対応の推進
慢性的降水・気象パターンの変化や平均気温上昇・植林地、原料調達先が被害を受け、安定調達に影響が出る・調達先の多角化による調達の安定化
・植林の推進による原材料の調達量の確保
・植林する地域・気候に適した樹種の選定、育種開発

機 会

一方、1.5℃シナリオにおいて、気候変動リスクは、同時に機会とも考えられ、カーボンニュートラル実現へのロードマップに示していますように、多種多様な燃料を利用できるノウハウや新技術の導入により、積極的に化石燃料の削減に取り組み、リサイクル発電設備の導入、太陽光発電の導入などによるエネルギーの転換や新技術による省エネルギーを進め、当社だけの取り組みでなく、地域社会との共存の取り組みとして推進します。
また、環境配慮型商品、環境貢献商品の開発を進め市場に展開することで、「3つの生きる(衛生・人生・再生)」に取り組み、「世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ」の理念の実現に向けて進めていきます。2022年度はホーム&パーソナルケア(以下、H&PC)事業では、製品パッケージのプラスチック使用量削減、紙・板紙事業では、脱プラスチック・減プラスチックに貢献可能な製品としての展開、新たな素材であるセルロースナノファイバー(以下、CNF)についても、軽量かつ高強度に貢献するCNF複合樹脂のサンプル供給による用途開発を推進し、社会への貢献に取り組みました。さらに、製紙産業における素材を活用した、バイオリファイナリーの開発にも着手し、社会全体での大幅なLCAへの改善に取り組んでいきます。

1.5℃シナリオ

(※表は横にスクロールします。)

機会項目事象の詳細2030年1.5℃2050年1.5℃戦略・対応策
商品と
サービス
需要家の品質要求が変化
技術革新による新商品・サービスの開発
・環境配慮型商品(FSC商品、脱プラ・減プラ商品)の需要増加
・環境貢献商品(制汗、防災・避難グッズ商品)の需要増加
・リサイクルに対する認識の変化
・産業廃棄物を減らす風潮
・水資源の節約から節水型商品の増加
(紙板紙部門)
・脱プラ製品、包装機能材の拡大
・FSC等の認証品拡大
・CNF素材、RFIDの開発推進、製品拡大
(H&PC部門)
・脱プラ包装材への転換
・マスク、衛生用品等の気候変動対応商品の拡大
・制汗商品、熱中症対策商品の開発、販売拡大
・水に溶けやすい商品等の開発、節水支援
廃棄物、余剰の有効利用・バイオ素材、製品の需要増加・製紙素材を利用したバイオマス化成品、素材の開発
資源効率原料のリサイクル
資材の再利用
・原材料のリサイクルシステム構築による費用低減
・消費者環境政策要求の満足度向上
・使用済み紙おむつを回収、リサイクルする仕組みの構築
・資材を再利用する設備導入
・環境配慮型商品の上市

リスク管理

大王グループでは、気候変動を含むサステナビリティに関する総合的な管理は「サステナビリティ委員会」に集約しています。
「サステナビリティ委員会」では、その下部会の「ESG小委員会」で「地球温暖化対策部会」「TCFD対応部会」「物流GHG削減部会」「森林・生物多様性対応部会」「価値共創部会」で抽出された気候関連のリスクと機会を評価し、「サステナビリティ委員会」でリスクと機会の対応要素を審議しています。TCFDの戦略を策定するにあたり、気候関連リスクの識別・評価のため、シナリオ分析を行いました。そのプロセスとして、まず考えられる気候変動ドライバー(リスク・機会)を、(1)移行リスク(①政策・法規制 ②市場 ③評判 ④技術)と(2)物理的リスク(①急性的②慢性的)、(3)機会(①エネルギー源 ②市場 ③レジリエンス④商品とサービス ⑤資源効率)に分けて網羅的に抽出して、財務に影響を与える項目を整理しました。
それらの項目について、影響範囲の特定や不確実性の高/低の評価を行い、さらに定性的、及び定量的な財務インパクトへの大きさを検討するため、移行リスクは、IEA(国際エネルギー機関)のWorld Energy Outlook 2022におけるシナリオ(NZE・STEPs)など、物理的リスクは、WR(I 世界資源研究所)が公表するAqueduct、文部科学省 気象庁「日本の気候変動2020」、Four Twenty Seven、Encoreなどのパラメーター(カーボンプライス・原燃料価格など)を参照し算定・評価を行いました。
「サステナビリティ委員会」で審議された事項は、四半期に1回、取締役会に報告され、当社グループの経営に反映されます。同様に、コンプライアンス違反、不祥事を含む経営に重大な影響を及ぼす恐れのあるリスクの識別・評価は、「リスク・コンプライアンス委員会」で審議され、取締役会に定期的に報告され、反映されます。
なお、「サステナビリティ委員会」と「リスク・コンプライアンス委員会」で抽出されたリスク・機会は、各々の事務局のサステナビリティ推進部と総務部でリスク・機会の抽出の網羅性、対応も含め共有され、統合的に管理されています。

指標と目標

「大王グループ サステナビリティ・ビジョン」に連動させる形で、地球温暖化対策の長期ビジョンとして「2050年度 カーボンニュートラルを実現」という目標を設定しました。そのマイルストーンとして、Scope1+2における「2030年度化石由来CO2排出量46%削減(2013年度対比)」という目標も設定しています。
これらを実現に導くための「カーボンニュートラル実現へのロードマップ」では、2050年度までに基幹工場の三島工場で保有する石炭ボイラー全3缶停止の方針を掲げ、2030年度までに1缶以上、2040年度までに2缶目、2050年度までに3缶目と、石炭のフェードアウトに向け段階的に停止するという指標を設定しています。今回、TCFDのシナリオ分析及び、原燃料市況を踏まえ、石炭ボイラーの停止時期の前倒しを進めており、FITバイオマス発電の売電から自社使用への切り替えとN3号抄紙機の停止を完了させました。さらに、石炭の代替としてブラックペレットの開発・混焼に取り組んでおり、2030年度までに石炭ボイラー1缶以上停止の実現を目指しています。自社においては、再生可能エネルギーや低炭素燃料(LNGなど)への燃料転換、省エネルギーを推進するとともに、地域におけるゴミも含め、当社リサイクルボイラーでサーマルリサイクルすることで、地域全体でのGHG排出量削減も進めていきます。
また、植林拡大にも取り組んでおり、最終的にCO2の排出削減と吸収・固定をバランスさせて、2050年度までにカーボンニュートラルを達成していきます。Scope3については、2021年度大王製紙単体、2022年度は国内生産会社を追加して算出が完了しており、今後、グループ全社の定量把握と目標設定に取り組んでいきます。

Scope1+2  目標

Scope1+2  実績推移

Scope3  実績

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