2006年4月25日

環境と経済の両立への挑戦
「産業廃棄物から製紙用薬品を再生する技術を確立」


当社は、1993年に「DAIO地球環境憲章」を制定し、業界に先駆けて、海外植林による森づくり、古紙の高度利用、産業廃棄物の削減等を通し、CSR(企業の社会的責任)活動として地球環境保護に取組んできました。

しかし、産業廃棄物の削減については、再生利用と発生源削減対策を進める一方で、古紙利用の拡大を進めるに従って、古紙再生時に発生する廃棄物が増え、処理費用が増加するという、環境と経済が相反する問題が発生してきました。この問題を解決するには、これらの廃棄物を製紙用の貴重な資源として活用することが不可欠と考え、当社は2001年より再生利用するための研究を続けてまいりました。

古紙処理においては、紙の原料となるパルプ繊維を取り出す技術は既に確立されてきましたが、紙の表面や内部に塗布・添加されている製紙用無機薬品の再生については、実用化されていませんでした。紙の品質を向上させるため、製紙工程ではクレー、炭酸カルシウム等天然鉱物系の無機薬品を使用しますが、これらの無機薬品は古紙を再生する際に廃棄物(製紙スラッジ)として排出されます。

当社は昨年9月に、これらの廃棄物から製紙用無機薬品(以下「再生填料」と記す)を実用可能な品質レベルで再生利用することに国内で初めて成功しました。現在、稼動中の実証プラントで製造した「再生填料」を使用した「完全再生紙」(別紙資料:再生パルプ及び植林木パルプ100%の紙に「再生填料」を使用したリサイクル素材100%の再生紙)も既に開発、商品化しました。

<テーブルテストとテスト機による運転条件の確立>

再生利用するためのシステムは、廃棄物の脱水工程 → 乾燥・焼成工程 → 粉砕工程から構成されます。「再生填料」の白色度、製紙用ワイヤの磨耗対策等を考慮した各工程の運転条件を、テーブルテストを繰り返し行うことにより最適化するとともに、テーブルテストの結果を検証するため、テスト機により再生填料評価サンプルを製造し、実機の製紙マシンで品質評価し、良好な結果を得ました。

<実証プラントの建設と品質確立>

平成17年9月に360トン/年の実証プラントを建設し、試行錯誤を繰り返しながら運転条件を確立してきました。例えば、燃焼炉の温度分布の均一化を図り、部分的な高温領域の発生による炭酸カルシウムの熱分解や灰のガラス化等の弊害を排除したり、白色度を調整するため、600℃付近の低温で2段階処理する方法等を模索しながら確立しました。また、粉砕工程も同様に再生填料による製紙用ワイヤの磨耗対策を考慮し、粉砕方式を数種類組み合わせて最適化するなど、テーブルテストでの確認から実証プラントの建設・稼動まで約6年間を要し、ようやく当初構想していた品質、コスト目標に到達しました。

<環境と経済の両立>

実証プラントの実績を基に、近い将来30,000トン/年の製造設備を建設する計画です。再生填料の製造費用は、新品填料購入価格とほぼ同等であるため、新たな費用は発生しません。このことに加えて、これまで製紙スラッジは焼却後、廃棄物として処分してきましたが、焼却エネルギー費の削減と共に、焼却灰の処理費用が不要となります。

このように、当社は「再生填料」を製造することにより、環境と経済を両立させることが可能となりました。

今後、さらに塗工紙への用途を展開して「再生填料」の使用量を拡大することにより天然資源の保護に努め、環境にやさしい製品の製造を通じ、資源循環型社会の形成に貢献していく所存です。

これらの成果に対し、当社は、平成18年4月「第15回地球環境大賞」において文部科学大臣賞を受賞しました。当社が「地球環境大賞」を受賞するのは、第8回の「環境庁長官賞」に次いで、2回目です。