2005年10月17日

古紙から製紙用無機薬品を再生することに成功



当社は地球環境の保全活動を重点課題ととらえ、古紙の利用促進、海外植林事業の拡大、化石燃料からバイオマスエネルギー*1への転換など、限りある資源のリサイクル化に向け、積極的に活動しています。

*1:植物などの生物体(バイオマス)によって作り出された、再生可能なエネルギー。

この中で、古紙の利用については、国内で初めて古紙100%の新聞用紙の上市や、雑誌古紙単体での紙用古紙パルプ化*2に成功するなど、古紙の再利用化技術の開発に取組んできました。

*2:雑誌古紙は背糊やビニール等の異物が多く、利用する際は一般的に、他の古紙(新聞紙、上級紙等)と混合して紙用古紙パルプ化します。当社では設備改造と操業技術の改善により、雑誌古紙単体での紙用古紙パルプ化に成功しています。

古紙の再利用化は、以前から新聞古紙や段ボール古紙で行われてきましたが、15年ほど前より、チラシやポスターなどの塗工紙*3の回収量が増加し、紙用古紙パルプの原料として使用されるようになりました。この事により、塗工紙からパルプ繊維を回収する技術は進歩してきましたが、一方で、製紙用無機薬品である填料・顔料*4を、紙へ再利用する技術は実用化されていません。

*3:パルプ繊維からなる紙の表面に、炭酸カルシウム・クレー等の製紙用無機薬品を塗布し、平滑性と印刷適性を持たせた紙。チラシやパンフレット等に利用されています。

*4:炭酸カルシウム・クレー・タルク等があり、用途により填料と顔料に区別されます。填料は紙製造時にパルプと同時に添加され、顔料は紙の表面に塗布されます。

古紙中の製紙用無機薬品は、古紙からパルプ繊維を回収した後の残分となり、製紙スラッジと呼ばれます。製紙スラッジにはパルプ短繊維やインク成分等も含まれているため、ボイラーや焼却炉で焼却し、焼却灰は主にセメント原料として使用されますが、一部は産業廃棄物として埋立処分されています。

しかしながら、当社は古紙の有効活用を促進して行くためには、製紙スラッジも紙用の貴重な資源として再生利用することが不可欠と考え、研究を続けてきました。

製紙スラッジから製紙用無機薬品を回収するには、不純物(パルプ短繊維や インク成分等)を効率良く分離すること及び現状使用している天然産の製紙用無機薬品と遜色無い白色度を持ち、製紙用具などに損傷を与え ない微粒子状に加工することが必要です。

当社では、化学パルプ用石灰の焼成及び自社製造填料の粉砕などで蓄積してきた技術をベースに、これらの問題点を解決し、製紙スラッジの焼成・粉砕などの加工技術を国内で初めて実用レベルで確立し、古紙から製紙用無機薬品を再生することに成功しました。

このようにして再生した製紙用無機薬品を「再生填料」と呼んでいます。

<古紙のリサイクル工程(塗工紙を使用した広告用チラシの事例)>
古紙のリサイクル工程

「再生填料」の試作品は、上質紙や塗工紙などで繰返し試用して、抄紙機や塗工機での操業性及び製品品質の評価テストを重ねた結果、実用 可能な品質レベルにあることを確認しています。

「再生填料」の製造技術をさらに発展させるため、本年9月、三島工場(四国中央市)に量産に向けた実証プラントを建設しました。

今後、実証プラントで製造した「再生填料」を紙用の無機薬品として実用化し、「完全再生紙*5」を開発します。同時に、白色度の更なる向上を行い、逐次、塗工紙への用途展開を進め、近い将来、「再生填料」の生産能力を拡大し、天然産の製紙用無機薬品との置換えを進めることで、資源循環型社会の形成に寄与する所存です。

*5:完全再生紙:再生パルプを100%使用した紙は、当社品をはじめ既に市販されていますが、この紙に添加される填料・顔料は天然産の無機鉱物です。当社では再生パルプ100%の紙に、「再生填料」を使用したリサイクル素材100%の「完全再生紙」を開発する計画です。

<再生填料実証プラント概要>

1. 設備仕様: 製紙スラッジの脱水・乾燥・焼成・粉砕・貯蔵設備生産能力30トン/月
2. 品質: 白色度78〜83%(天然産クレーと同等)
用途に応じ粒径調整可能
3. 設備投資金額: 約130百万円